寒さ厳しき中、今週は水曜日から金曜日まで3日連続で会議があった。
日本臨床歯周病学会の委員長会議や、日本大学松戸歯学部同窓会理事会、その学術委員会。。。
会議の席では協議に上がらなかったが、先月放送されたNHKのインプラント番組は波紋を呼んでいる様だ。
患者さんから「インプラント治療を受けたくない」などと言われて困っていると話された先生があった。
残念ながら私はその番組を拝見出来なかったのだが、患者さんやスタッフ、会議に出席した先生から概略をお聞きすることが出来た。
番組は整理すると①インプラント治療を導入して大きな利益を得た先生が紹介された。②インプラント治療で苦痛を受けた患者さんが多く存在する。③メーカー主導の少ない研修でインプラント治療を行う先生が存在する。の3点になるだろうか。
では、①インプラント治療は本当に儲かるのだろうか?
経営に疎い私にアドバイスをしてくれている会計事務所からは「インプラントは利益率が悪い」と言われている。
経費がかかり過ぎると言うのがその理由だ。
私の導入しているインプラントはスウェーデンのアストラテック社と、アメリカの3iインプラントイノベーションズ社だが、さすが欧米のトップメーカー。製品はどちらもいい価格である。
実はこれらのメーカーの製品はコピーが多い。いわゆるパクりだ。
以前、知人の歯科医から○○社のインプラントは3iインプラントイノベーションズと互換性があり、製品もそっくりで3iより安いから乗り換えた方がいい。とアドバイスを受けた。経営的なセンスがなく面倒くさがりな私は、まったく興味を感じずそのまま3i社製を使用していた。先日その○○社が無くなった事を別の知人から教えて頂いた。
所詮パクリだった。
しかし安価な製品を使えば経営には有利なのかもしれない。
経費は製品だけではない。インプラントの手術はフィクスチャー(インプラント本体)を顎骨に埋入する1次オペから開始される。
1次オペでは顎骨に埋入したフィクスチャーを歯茎で完全に覆う必要がる。あたりまえだが、埋入の深さや方向などはレントゲン写真を撮影しながら慎重に行う。
手術には出血を伴う。健康であろうとなかろうと、人の血液は医学的に汚染物(感染性を有するもの)として取り扱われる。それは手術中の私とアシスタントの手も感染源になると言うことを意味する。
手術中、私とアシスタントが触れていいものは限られる。それは手術に使用する器具のみに限定される。
したがって手術中に薬剤の補充や器具の交換が必要になったとき、戸棚の扉を開けて器具や薬剤を取り出すことは禁じられる。
レントゲン写真を撮影するとき、レントゲン室のドアの開け閉めやレントゲン装置の設定などももちろん厳禁である。
そのため、アシスタント以外にサブアシスタントが必要になる。それは人手がかかると言うことだ。
もちろんのことだが、手術中のアシスタントである担当歯科衛生士は、自分の患者さんの治療やメンテナンスは出来なくなる。それは診察台が空くことを意味する。
診察台が空くと言う事は空いた時間は収入がないと言うことになる。
サブアシスタントを付けなかったり、歯科衛生士が存在しない歯科医院は経営的に有利なのかもしれない。
1次手術から2次手術を経た後、インプラント上部構造(歯の形をしたかぶせ物)を作成する補綴(ほてつ)治療と言うステップになる。
インプラント上部構造の作成は歯科技工士さんが担当する。歯科技工士さんへは技工指示書という処方箋の様な依頼書を介して仕事を発注する。
その指示書には患者さんに装着されるインプラント上部構造を作成する方法や材料を記載する。
インプラントの技工作業は通常の歯のかぶせ物を作成するのと比べ、高い精度が要求され、より多くの手間と材料がかかる。それは高額になると言う事である。
手間のかからない方法と安価な材料でインプラント上部構造の作成を依頼すれば、経営的には有利なのかもしれない。
私はインプラント治療が歯科医療に大きな恩恵を与えてくれていると思っている。したがってインプラント治療の頻度は多いかと思う。
以前、このブログにも記載したが、インプラントは医学的には病態である。病態であるインプラントをより長くお口の中で機能させるためには、最善をつくすことが求められる。
重箱の隅をつつけばキリがないかもしれないが、医療としてのルールやモラルなどのコンプライアンスを保てばインプラントは決して儲かる医療ではないと思うが。。。